第三者割当の限界

さて、前回は、なぜわざわざ「株」なんて単位を使うのか、という説明をしました。
その関連で、第三者割当増資の原理も説明してしまいました。

とはいえ、第三者割当増資があると、株価(企業価値評価)的には損しないものの、選挙の票の価値は確実に下がります。もちろん、その分より大きい会社を動かす事ができるわけですが、過半数取ったと思ったら知らないうちに又過半数に足りなくなってた、などというのも困ります。
もちろん、仕方ないものは仕方ないのですが、あんまり(取締役の)好き勝手にはできない制度になっています。

制限1 授権枠
 第三者割当で発行できる株式の数には上限が各会社ごとに決まっています。この枠を変更するには、株主総会の特別決議(2/3以上の賛成)が必要です。

制限2 資金調達の必要性
 そもそも、新株を発行するのは、現金を手に入れるためです。既存の株主に影響を与える(損とは限りませんが)ので、資金の必要がなければ、新株なんか出さない方が安全です。
 資金が必要といえるのは、
 1・金が足りなくて倒産しそう
 2・まとまった金があれば凄い事ができる
のどちらかです。
「主要取引先から取引を止められそうだから自社の議決権をあげる」というのは、ここで言う「必要性」には含まれません。
もちろん、倒産しそうなのを助けてくれるのは取引先しかない、というケースは多いでしょうし、運転資金が足りないのを埋めてもらうのは「必要性がある」と認めてもらえます。
逆に言うと、資金調達の必要性があって、その目的にふさわしい出資元に新株を出すのであれば、株主の意向はあまり関係ありません。

 実際、ベルシステム24という会社が、CSKの子会社だったにも拘らず、突然、親会社から派遣されてきた取締役の意向を無視して、ソフトバンク(かその子会社)に大量の新株を出した、という事件がありました。後で和解により終結しましたが、東京地裁CSKの差止請求を認めませんでした。
 この決定は、批判はあったものの、増資によるソフトバンク子会社買収という目的を重視した結果であり、現在の実務にも影響を残しています。